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「擬洋風ルネサンス」に参加


奇形の擬洋風建築・双頭の旧済生館 2023 oil on canvas 900*900mm


東北芸術工科大学の狩野宏明先生が主催しているチュートリアル「ルネサンス絵画研究会」による展覧会「擬洋風ルネサンス」に参加している。会場となるのは、1878年(明治11)に山形県立病院として建設された旧済生館本館という三層楼の建造物で、国の重要文化財に指定されている擬洋風建築の代表格だ。1階の回廊は十四角形、2階は正十六角形、3階は八角形という不思議な構造やペールオレンジの外壁など個性的な外観で、山形市で生まれ育った身としては慣れ親しんだものだったが、大人になって再会するとその威容に驚嘆するばかりだ。



山形市郷土館(旧済生館)外観


「擬洋風」などと、まるで偽物のような言われようだが、いかに明治の大工が悩みながら、しかし意欲的に、西洋の真似事ではなく、日本の伝統的な技法や様式を捨て去るということではなく、極めて創造的に向き合ったのかということが、外観から内装の細部に至るまで神経の研ぎ澄まされた造形から伝わってくる。この美しい建造物でどのような作品を展示するか考えたとき、以前から温めていたアイデアを実行したいと考えた。それは「奇形の擬洋風建築」というシリーズで、山形県に数多くみられる擬洋風建築の建造物をモチーフに、精子の奇形パターンを当てはめて描くものであり、本作「双頭の旧済生館」はその第一作となった。私がこれまで描いてきた「西洋近代化を目指し、世界一の経済大国となってもなお悲しいほどずんぐりむっくりの日本人」、あるいは「奇形の西洋人」たる日本人の自画像として擬洋風建築の姿を借り、かつ昨今の少子化や経済衰退を「生殖不能」状態になぞらえて表現しようとしたものだ。


本作ではもう一つ、西洋近代化を象徴する要素として「油彩技法」についての独自解釈も盛り込まれている。

旧済生館の床は、建設当時先端的な床材であったリノリウムが敷き詰められている。独特な光沢感と柔らかい感触が、建築となじんで気持ちがいい。このリノリウム、天然素材として今でも使用されていて、材料はジュート麻に石灰や木粉や色粉などを練り込んだ亜麻仁油を塗布、あるいはしみこませてつくられるらしい。亜麻仁油とは油彩画ではなじみあるリンシードオイルのことで、麻布はキャンバスに用いられている、、ということは、ほとんど油彩画の材料で作られているということで、これでキャンバスを作れば独特の風合いと、本展にふさわしい文脈が得られると考え、早速ホームセンターから農業資材のジュート麻布と消石灰を買ってきて、リンシードオイルと混ぜて塗布してみた。しかし当然ながら思ったようにうまくいかず、穴ぼこだらけの、醜いキャンバスが出来上がってしまった。しかしそれもいい。きっと明治期の高橋由一をはじめとする日本油彩画黎明期の画家たちも、様々な実験をして手持ちの材料でキャンバスづくりを試みたに違いない。擬洋風建築に挑んだ大工たちのように、創意に富んだ日本的油彩画を模索したはずだ。少しだけでも、それら名もなき偉人たちに気持ちを重ねてみたいと思ったのだ。


学生と共に旧済生館の写生会に参加


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