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【報告】【見た】MAWの記録(静岡県浜松市天竜区)と、ポーラ美術館

9月27日
読了時間: 7分

更新日:2 日前

アーツカウンシルしずおかの事業であるマイクロ・アート・ワーケーションに参加。インスタで流れてきた記事に関心を抱いて応募。静岡県内各地で活動する6つの団体等がホストを務め、それぞれ3人程度づつ配置される。僕は浜松市天竜二俣に希望を出して、その通り採択された。全体の倍率は10倍程度だった。


アーティスト・イン・レジデンスでは、多くの場合滞在制作と成果展が求められる場合が多いが、今回はそれらは課されておらず、滞在日記をnoteにアップすることが基本的なミッションとなる。


僕のような作家にとって、この仕組みがどれほどありがたいか。

レジデンスとか公募というのは、どこか専業作家を相手にしているところがあって、定職に就いていて、数か月単位のまとまった休みを取得することが難しい人間にとってはほとんど選択肢がない中で、数少ない機会を提供してくれた。

だいたい、制作というのをどう考えるのかという点において、業界の狭い考えがベースにある。マーケット至上主義なのか、すべて共犯関係なのか。

日本では90%が事業主ではなくてサラリーマンで、僕は家族と生きていくために定職に就いていて、その中で制作しているんだけど、そういう作家はお呼びでないと言わんばかりの制度設計が多勢を占めているのが現状だ。もしかしたら、妻子あるサラリーマンというのは、世間が抱いている、あるいは期待しているアーティスト像からはかけ離れているのかもしれない。

そういう中にあって、このMAWという事業は、実はかなり多く存在するであろうそういう作家を救い上げてくれるとても画期的な事業でもあるのだ。そして実はそこにこそ、現代社会をいかに生き抜いていくかという切実で実践的な視点があるのではないか。


さて、それはさておき、迎えてくれたのは、地域でコミュニティスペースを運営する「どんつき」さん。「どんつき」は突き当りを意味する言葉で、東北では聞きなじみがない。


一緒に活動していたのは、俳人でダンサーの前川友萌香さんと、ワークショップデザイナーで東北芸術工科大学准教授の石沢惠理さん(石沢さんは大学の後輩で20年来の付き合い。今回は全くの偶然で同じ時期かつ同じ場所に配置となった)。


滞在についての報告は、下記URLに掲載している。



ここでは、とりとめのない感想をメモしておきたい。


今回はとても良い経験だった。

正直、ものすごくやる気を失っていたから。

知らない土地に浸かって、知らない人たちと交流して、よかった。

とても社交的なモードになった。


天竜区は面白かった。

天竜川という太い川が、長野県の諏訪湖のところから、遠州灘に向かって流れている。浜松というのは最近合併されたようで、南北に長い広大な地域になっている。その中でも北半分を占める天竜区は、ほぼ95%くらいは山林になっている。

天竜川の支流がいくつもあって、それが谷を形成していて、そこに町ができている。なので、ほとんど急な坂に家屋や茶畑などが並んでいる。急なので、石垣がとても目立って、独特の景観を作っている。石垣もきれいに整えられた石というよりも、板状の石が平積みされた感じ。見ると、川辺の小石も平たいミルフィーユ状になっていて、どこかキラキラとメタリックな光沢がある。


天竜区の多くの地区には宿場町がある。これは天竜杉の伐採と木流しの労働者、ダムの建設工事者の宿場として、また秋葉山信仰における秋葉古道、また塩の道としての輸送経路など、古来より人が行き交い交流する地域だったことを感じさせる。今でもきちんとJR飯田線や三遠南信自動車道が通っていて(まだ完成していない区間あり)、とんでもない山奥に来たという印象の水窪地域も、どこかにぎやかな昭和のまちという風情で、とても魅力的だった。


現地も少子高齢化や人口減少が悩みという話はもちろんあるけど、東北の、山形の、長井と比べたら、なんてことはない感じがしたというか、遠州は東北の20年前のような雰囲気かな、という印象だった。でも、それは勘違いかもしれなくて、天竜区にはほぼ田園地帯は無いので(崖ばかりなので、棚田はあるが)、農村と林業のまちを比較する時の観点を見直した方がよさそう。


民俗資料館にも行けた。木地師やお茶に関する民具が目新しかった。そして古い芸能がいくつか残っていることも興味深かった。盆地のようにだだっ広いエリアじゃなくて、谷ごとに、どこか文化が違うという感じ。水窪まで行くと秋葉信仰という感じじゃない。こういう、地形とか気候風土が文化や人格を形成するということが、よりよく感じられた気がした。あと、天竜川が北から南に力強く下って流れていて、遠州灘に至る地形が、風に関係しているらしく、龍山地域は風の谷という感じで、20畳サイズの巨大な「ぶか凧」を揚げる風習がある。風はお茶栽培にも良い効果をもたらすらしく、天竜茶は静岡でも良質なブランドとして有名だ。

でも、ダムが整備されてからは風が弱まったらしく、凧あげも小規模になっている。


天竜川はやはり龍の伝説があって、龍山は龍の背中や尻に当たる地名があるとか、竜頭山という山は龍の枕だったとかいう話も面白かった。


僕が拠点としていた二俣地区は、昔から木流で流れてきた木材を集積して売りさばく拠点としてめちゃくちゃ栄えていたとのこと。その構造が今でもあるような気がして、浜松の大都市と北遠の地域との境に位置していることから、両方の文化を併せ持つような雰囲気で、それが今の二俣エリアの賑わいをもたらしているかなと感じた。


盆地のだだっ広い世界観と、天竜の、狭い谷の世界観。これはかなり違う文化や風習、信仰を作っていると思われ、興味深いところ。


**

静岡からの帰り道、せっかくなので箱根まで寄り道。

道中、御殿場に日本山妙法寺の仏舎利塔があって驚き。


目的はポーラ美術館で開催中の展覧会「モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目 ― モネと21世紀のアート」を見ること。

とても素晴らし。すごく高価なものを見た感じ。

ポーラ美術館も美し

ポーラ美術館が所蔵するモネ作品と現代作家のコラボレーション展。

モネ作品をいくつかの観点――色彩とか光とかいろいろ――に分類して、それぞれに現代作家が呼応する構成。巧みだった。


ガラスがとても美しい建築
ガラスがとても美しい建築
ケリス・ウィン・エヴァンスのデュシャンのやつと、会場に複数あるスーメイ・ツェによる映像。すげーディスプレイだった。ピカピカの工芸品のような。つまり、ガラスの美術館、モネの眼、眼科医の証人、そしてピカピカの映像の眼球というわけだな。。
ケリス・ウィン・エヴァンスのデュシャンのやつと、会場に複数あるスーメイ・ツェによる映像。すげーディスプレイだった。ピカピカの工芸品のような。つまり、ガラスの美術館、モネの眼、眼科医の証人、そしてピカピカの映像の眼球というわけだな。。

タオ・グエン・ファン、とても面白い映像だった。ベトナムの神話というか寓話をベースに、現代ののすごさメコン川とかいろいろ、実写とかドローイングのアニメーションとかが混ざった感じ。もう一回見たいな。


ダニエル・スティーグマン・マングラネ、美術館の内と外を呼応させるインスタレーション、よかった。


ピエール・ユイグの、蜂の巣の彫刻、はじめて実物を見たが、よかった。


ヘンリー・ムーアのブロンズ、よかった


ダニエル・スティーグマン・マングラネ。木の枝が丁寧に真っ二つに裂かれていたり、窓ガラスがすごかったり、細いライトが床から天井まであって、よく見たら外にも。
ダニエル・スティーグマン・マングラネ。木の枝が丁寧に真っ二つに裂かれていたり、窓ガラスがすごかったり、細いライトが床から天井まであって、よく見たら外にも。
ピエール・ユイグとヴォルフガング・ティルマンスとアローラ&カルサディーラのコラボレーション。これはモネの睡蓮との関係を見れば、展示室の床は水面であると捉えるのだろうな
ピエール・ユイグとヴォルフガング・ティルマンスとアローラ&カルサディーラのコラボレーション。これはモネの睡蓮との関係を見れば、展示室の床は水面であると捉えるのだろうな
ムーア。なんかとてもすばらしいたたずまい。
ムーア。なんかとてもすばらしいたたずまい。

「この経験を地元で活かしたい」という気持ちと、「もう帰りたくないずっと旅していたい」という気持ち、どっちもあるんだけど、一番は「つくりたい」という気持ちになった。


旅とインプット、コミュニケーション、とてもいい。

できれば、山間部の奥まったところで制作している人たちと、もっと出会いたいものだ。

 
 

© 2019 TAKURO GOTO

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